時は2005年、日本は学生起業家やガレージカンパニーがスーパーベンチャーにのし上がるなど、不況からの再生を沢山の若者が自力で挑戦していました。
私も小粒ながら29歳当時であり、体力と時間、そして失うものは命くらいだったので、その時の人生の全てをベンチャー経営に注ぎました。
実際には7年ほどそれに取り組み、数々の逸話も創ることができましたが、2008年に発生したリーマンショックの影響で外部環境がそこから数年停滞したため、IPO計画は相当先延ばしの見通しとなり、私は2011年8月末でベンチャー企業から退任し、2011年9月1日に今の個人事務所であるピースライフジャパンを京都で創業しました。
天気の悪い、小雨の降るどんよりとした日を今も覚えています。
その7年間の中で、余りにも偶然ですが、その当時の住まいも徒歩5分圏内と近所であった佐藤さん(サトウヒロシ)との交流は大いに酒を酌み交わし、激しい人生論をやり取りし、そして遊びも頂点レベルに達し、それぞれ別々の仕事をしていましたが、私が個人で独立する際に温めていた大人向けの癒しの絵本ビジネスのことを彼に話してみました。
すると、丁度、彼も数年後には独立する考えでいて、何かオリジナルのメディアが持ちたいと思っていたようで、私たちの構想は完全一致することに至りました。
これは私にとっては孔明を得た劉備の如くの素晴らしい出来事でした。
しかし、ここからがビジネスの障壁に数秒でぶつかるのです。
【当時のビジネス問題】
1.二人とも絵本など創ったこともない。
2.電子出版など、どのように制作するかも検討もつかない。
2011年当時はアマゾンも漸く、日本でのキンドル(電子書籍サービス)を展開しようという手探り感満載の状況で、また、それまでの電子書籍と言えばPDFで読む活字モノが主であり、まして絵本など皆無に近かったと思います。
1の創作課題に関しては既存の絵本を読みまくり、構成を独学で考えることにしました。
この件はまだ良かったのですが、2の電子化は技術の問題であり、単なる営業マンの私が簡単にマスターできるものではなかったです(ウェブデザインの仕事はしていましたが領域が異なり、未知の世界でした)
その解決のために、まずはPDFでの制作販売を考えました。
このフローは簡単です。手描きでもデザインデータでもPDFにするだけですが、このファイル形式の問題はPDFを譲渡してしまうため、著作権を守れないリスクがあることです。
つまり、PDFを入手した読者が誰かにそのファイルを流せてしまうということです。
ということで、数秒でボツ。
次に、フリーソフトです。
横浜の素晴らしいITベンチャーが独自の電子書籍ソフトを開発していて、良かったのですが
再生環境がWINDOWSのみで、様々なデバイスに対応することを最初から想定していたため、残念ながら断念しました。
更に、後々ビジネスパートナーとなるのですが、国内最強の電子書籍制作システムを展開しているスターティアラボさんにサービスを問い合わせすると、とんでもない導入金額とメンテナンス費用の返事が返ってきて、とても投資回収が不可であり、これも断念しました。
このように技術面での袋小路が当初の大問題であり、デビュー作品を販売するまでに4年もの時間が経過してしまった訳です(しかし、その間も多大なるチャレンジはしています。その件はまた後で説明します)
私の新規ビジネスである「絵本屋.com」はこんな危うい船出で始まりました。
この創業秘話シリーズでは、2015年11月に最初の作品である、サトウヒロシ「万年筆画絵巻レノン40」を販売するまでをお伝えします。
そろそろ、このシリーズは佳境を迎えていきます…。
絵本屋.comとは
2015年11月からサービスを開始した、大人向け電子書籍絵本レーベル。
大人が笑える、泣ける、癒されるといったピュアな感情を得られる絵本を所属の絵本作家陣と共に創作し、各種電子書籍絵本ポータルサイトで販売している。代表作のサトウヒロシ作「明日死ぬかもしれないか今お伝えします」はアマゾンキンドルストア総合ランキング第2位を獲得する大ヒット作(2018年12月にMBS「ちちんぷいぷい」に今井とサトウヒロシが生出演で作品が放送されている)絵本屋.comの一部の作品は海外でも人気を博し、中国、台湾、韓国、アメリカで紙書籍、電子書籍で流通している。